ロレックスブログ2020

オーシャンズ10月号 『名刺代わりの腕時計』

無難な男
無難と聞いて思い浮かべるのは、没個性で当たり障りがない、いわゆる歯牙にもかけられないような存在だ。チャレンジ精神旺盛男にはあまり好ましくない形容だろう。
だが少し見方を変えると、この無難ほど奥深く、むしろ難しいことに気付く。無難でいるためには、自己顕示欲を捨て、もっぱら平凡に尽くす。周囲からは軽んじられるかもしれないが、その評価を超えたところに、本当の姿を秘めるのだ。
「道行く人々が振り返って君を見るならば、君の着こなしは間違いだ」。ダンディズムの祖とされるボー・ブランメルの言葉は、単なるお洒落の心得だけでなく、男の美学を説いている。周囲に溶け込みつつも、実は決して予定調和ではなく、強い意志を貫く。今回のテーマはそんな「無難な男」の腕元に似合う時計だ。
無難な印象をもたらす要素のひとつに挙がるのが「定番」だ。時代を超えてきた、誰もが認めるタイムレスなスタイルはそれだけで間違いのない選択だが、悪く言うと多数派に迎合している感も否めない。
これに対して、左のパネライ「ラジオミール」は1930年代、イタリア海軍の特殊潜水部隊に軍用時計として供給された当時のデザインを受け継ぎつつ、シリーズで初となる白の文字盤を採用。そしてケースサイズをブランドの現行モデルで最小となる42㎜径にして、ケースの厚みを10・93㎜に抑えている。
元祖"ミッションウォッチ"として今も語り継がれる伝統的なスタイルであっても、これまでになかった白文字盤という意外性に思わず食指が動く。さらに47㎜径を中心とするマッシブなシリーズにおいて、程良いサイズは腕元に馴染み、その一体感は周囲に洗練された印象を与える。
こうしてみると、実は無難には堅実さ、そして寛容、分相応といったスマートさが含まれていることがわかる。つまり無難は"難がない"ということであり、どんなシーンでも心地良さをもたらしてくれる。それでいて身に着ける人の個性をさりげなく引き立ててくれるのだ。


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