ロレックスブログ2020

【80点】ジラール・ペルゴ / ヴィンテージ 1945 XXL

次元を行き来する快楽
時計の美しさとは何が決まりごとなのか、時々これぞと定義し難くなる。必須なのは各エレメントが配置よく収まった整いのよい文字盤か、肝心なのは吟味された色の組み合わせか、いや、それよりトータルバランスのよさこそが主体か? などなど、考えは尽きない。
それでいくと、ヴィンテージ 1945 XXLに関して言えば、色遣いの妙味というのは当てはまらないだろう。ステンレススティールらしく引き締まった色調の銀色の文字盤の上にあるのは、スモールセコンド針のブルーと、そのサークル内にある数字の“60″の赤のみ。ぱっと見ると、そのふたつの差し色以外は、2010年のS.I.H.H.での発表作とさして変わらないと思ってしまうほどだ。だが、2011年の新作は、実は異なる要素のコンビネーションが見どころなのだ。基本デザインの角形ケースの流れを汲んだ四角い文字盤、ケースの延長上に続くラグはほぼ三角形、そして、円形のスモールセコンドが形成しているのは対極という美の姿だ。そして、角で構成された中、スモールセコンドの丸い形のみが自然と強調されるというだけではない。文字盤との段差が均一ではないところにもすぐに目が行く。円の下側はかなり浅くなっているが、上に行くほど傾斜がつけられ、深さがあるのだ。

このように手の込んだ作りは随所にあり、サイドから見た時にはさらに特色が分かるだろう。ケースと文字盤、風防は大きくカーブし、縦方向のみならず横方向も曲面を描いて、中心が盛り上がっているのだ。スモールセコンドとともに、フラットではない手法がバランスよく展開されている。2次元を代表する四角形、三角形、円形の競演が、奇をてらわず、ピュアな美観を形成する一方で、極度に湾曲し、膨らんだケースは3次元そのもの。実用性を意図しているのは明らかだ。それでこそ、このモデルは意義があると言えるだろう。というのも、縦36mm(ラグは含まず)、横35mmというサイズは、フラットケースではとても着けられたものではないはずだ。四角い箱状ならば、たいていの腕上にはいかにも荷物のごとく載っているような感じになりがちで、スルッとシャツの袖口にすんなりと滑り込まずに煩わしい。

実際、ヴィンテージ 1945 XXLは腕が細かろうが太かろうが、素晴らしい着け心地だ。しかし、それが曲面構成のケースのせいではないのには驚かされる。快適な装着感は、ケースの縦方向の勾配よりも、ケースからスウッと続くラグの形が担っているのだ。これがストラップとケースの間に余分な遊びを作らず一体感を取り持ち、最大限のフィット感を実現している。


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